「IT活用において社長が知っておくべき知識とは?」

  • 2005年12月 5日(月) 19:18 JST
  • 投稿者:
    HP委員会

「IT活用において社長が知っておくべき知識とは?」

ITコーディネータ、中小企業診断士
小島 康男

1) IT投資における社長の役割
 いろんなタイプの会社があります。ITを活用して儲ける仕組みを作り、業績をどんどんあげていらっしゃる会社の社長さんにとっては、「IT活用において社長が知っておくべき知識とは?」という質問は意味がないと思います。すでにIT活用の方法をよくご存知だからです。
 しかし、そうでないタイプの会社もあります。「ITをうまく使えば業績が向上しそうなことはわかるが、どうもITのことはよくわからなくて・・」とおっしゃる社長さんも多いと思います。中小企業の経営者の方のもともとの出身は製造や営業が多く、IT関連企業でない限りITに関する土地勘のようなものはありません。そのため、IT化の投資判断に自信が持てなかったり、導入・実行を人まかせする、というような状況になりがちです。

 しかし、新規店舗出店や工場の新規設備導入の投資においては、中小企業の経営者はその価値と投資コスト・リスクを自分で評価し、実際に導入の指揮をとっていらっしゃると思います。IT活用に関する投資も同様です。IT投資における経営者の役割は、
  1. ITを活用した経営戦略・事業計画を立案し、
  2. その経営戦略・事業計画の効果と投資コストおよびリスクを勘案して実施を決断し、
  3. その実施体制を確立して、
  4. 実行し実際に業績向上に結びつける
ことです。この役割を果たすため、あるレベルのIT活用に関する知識・情報を身につけることは絶対に必要なことです。

2) 社長が知っておくべき知識
 IT関連の知識・情報は多岐に渡り、必要なことを一度に理解することは不可能です。ただ少なくとも、業績向上のためにIT投資を検討されようとしているなら、どういう知識・情報を理解しないといけないか、どういう項目を調査しないといけないか、ということが明確にわかる必要があります。
 では、IT関連の知識をどこまで理解すれば、それができるのでしょうか。もちろん、個別企業の状況や導入しようとするIT技術により答えは変わりますが、IT関連の知識を仮に以下のように8種類に分け、以下に一般的にいえることを述べます。

(1)ITを活用した経営手法の知識
 SCM、CRM、SFA、ナレッジマネージメント、といったカタカナやアルファベット3文字・4文字の言葉でよく表される経営手法です。
 SCMやCRMなど一般の経済紙に出てくるような用語の意味については雑誌やセミナーで理解しておくことが望まれます。自社の経営改革のヒントになる可能性があるからです。そして実際に導入しようかと思われた時は、できるだけ手間をかけて事前に調査すべきです。すでに導入している企業の情報を収集したり、複数のITベンダーから情報提供を受けたりすることをお薦めします。経営手法の導入にあたってはシステム開発よりも業務運用体制の確立が重要な要素になります。

(2)IT関連技術の知識
 モバイル機器やICタグなど新しい事業やビジネスモデルを考える時のシーズになる知識です。
どんな技術がどんな役に立つのかアンテナを張っておくことが望まれます。そして採用しようと思われた時は、情報収集とともに試験的に導入して試行してみることをお薦めします。

(3)業務処理でITを活用する知識
 販売、生産、会計などの業務を効率よく実施するためどのようにITを使うか、という知識です。POSとかCADとかの知識も含まれます。
各業務の担当者が詳細を理解していれば、経営者は、納期短縮やコスト削減など、経営上の効果を把握していればよいと思います。

(4)IT関連業界の知識
 ITを活用するためは、パソコンなどのハードウェアや業務パッケージなどのソフトウェア、時には自社に合わせたシステムを作るためのシステム開発が必要です。通常はこういったハードウェア・ソフトウェアの購入やシステム開発の依頼をITベンダーに行います。この購入や依頼をうまく実施するため必要になるのがこの知識です。
 ですから普段は必要ありません。具体的なIT化プロジェクトを始める場合、必要になります。そのプロジェクトで使用する予定のソフトの業界での評価など、調査を行うことが必要です。

(5)情報システムの企画・開発・運用に関する知識
 IT導入をうまく実施するため必要になるのがこの知識で、開発手順・開発手法の知識、プロジェクト管理の知識などがあります。
 経営者自らが開発を担当するような小さな企業であれば、開発手順やプロジェクト管理のある程度の知識は必要です。少し企業が大きくて、企画・開発・運用の作業を自社の担当者やITベンダーの担当者に任せることができれば、経営者として理解する必要はないはずです。しかしその場合でも、システム開発のプロジェクトがうまくいかないと、なぜうまくいかないか、その対応をどうしたらよいか、という話になり、経営者も知識がないと担当者の言うことを鵜呑みにするしかありません。たとえば「その機能を追加開発すると2ヶ月開発期間が余分にかかります」と担当者からいわれた時、開発に関する知識がないとその妥当性の判断はむつかしくなります。
 むしろ経営者としては、知識もさることながら、プロジェクト担当者とのコミュニケーションが重要です。プロジェクトがスタートしたら進捗状況について継続的に報告を受けるとともに、できるだけ担当者と話をしてコミュニケーションを良くし、問題を早めに見つけて早めに対処させるようにするのが現実的な方法です。たとえば、コミュニケーションを良くすることにより、システムに求める機能に関して営業部門と経理部門で意見対立があることを早めに見つけることができ、その調整を早めに実施することにより開発のスケジュールが遅れることを防止できます。

(6)IT関連インフラの知識
 ハードウェア(プロセッサ、メモリ、など)、ソフトウェア(プログラム言語、OS、データベース、など)、ネットワーク(LAN、TCP/IP、など)の知識です。
 担当者はあるレベル以上の知識を持つ必要がありますが、経営者に詳しい知識は必要ありません。仕事をする上でどういう役にたって、どのくらいお金のかかるものか、ということは理解しておく必要があります。

(7)パソコン・インターネットの知識
 ワープロや電子メールなどの知識です。インフラの知識と同様、専門家と一般ユーザーで求められる知識は異なります。
 経営者に必ず必要な知識というものではありません。自分が使えなくても誰かにやってもらうということも可能です。ただ経営者自身がメールなど使える方がコミュニケーションやリーダシップを発揮する上で非常に有効です。

(8)セキュリティの知識
 コンピュータウィルス、個人情報保護法、暗号方式、などの知識です。
 経営者は個々のセキュリティ技術について理解する必要はありません。しかしセキュリティの重要性は認識する必要があります。そしてどういうリスクがあってどういう対応方法があるかという概要は理解しておくべきです。セキュリティは、経営者が積極的に取り組まないと企業に浸透しません。社員は成績に直結する販売活動や生産活動にどうしても重点をおいて、セキュリティに関する活動は後回しになります。経営者が、顧客情報流出などセキュリティに不備があった時の問題の重大さを認識し、セキュリティに積極的に取り組むように社内に指針を示すことが望まれます。

3) 社長を補佐する人材
 以上、経営者が理解すべき知識のレベルについて述べてきましたが、もしITに詳しくて信頼できる人材がいれば、それは経営者にとってありがたいことです。知識の獲得や調査はその人材にまかせることができ、その人材の助言に基づいて投資対効果の判断ができるので、経営者の負荷は減ります。そういった人材を育成することも経営者の仕事の一つです。

小島総合研究所 
 代表 小島康男
 中小企業診断士 ITコーディネータ
 PXL05365@nifty.com
(情報診断士の会編「なぜあなたの会社は儲からないのか」(同友館)の小島担当分に加筆しました。)

トラックバック

このエントリのトラックバックURL:
http://itckinki.jp/trackback.php/20070905191832429