・2025年度通常総会での理事長あいさつより
特定非営利活動法人ITC近畿会理事長の垣見多容です。
本日は、2025年度、令和7年度の通常総会にご参加いただきありがとうございます。
ここ数年の間、経済産業省をはじめ政府機関などが「2025年の崖」というキーワードで、我が国におけるデジタル化の遅れやDXの進展が道半ばであることから、社会経済情勢が一気に、まさに崖を転がり落ちるような危機的状況になると警鐘を鳴らしてきました。
その2025年も半ばを過ぎましたが、みなさんの周囲で、そうした危機的状況は現出していますでしょうか。
新政権発足以降、関税に代表されるアメリカファーストの政策が矢継ぎ早に出される米トランプ政権。一方、ウクライナ情勢、中東情勢はまだまだ地政学的な不安定要因となっています。
そうした国際情勢の一方で、国内経済は物価高騰や米不足などは喧伝されてはいるものの、幸いにして、目立った経済、社会の混乱や停滞は発生していないように思えます。
では、なぜ、「2025年の崖」が顕在化していないのか、いくつかの要因が考えられます。
ひとつめは、段階的な影響が分散して発生することにより、実は起こりつつあっても、即座には認識されないという遅延現象です。ふたつめは、それでも経済産業省などの警鐘により事前準備ができていたことによるものです。具体的には主要なERPシステムのサポート期間が2027年まで延長されたことによる延命効果。また、大企業においては90数パーセントの企業がこの数年間にDXに取り組んだこともあって、リスク分散が図れていることです。
三つめは、中小企業の状況です。従業員100人以下の企業ではDX着手率が半数以下と低く、大企業に比べ、経営体力がない中小企業では、生産性の低下やシステム不備の発生、それらによる競争力低下の影響が外部に表れにくい構造があります。
したがって、「2025年の崖」は、事前の警鐘の効果もあって崖というよりも傾斜として、やや緩和された形で進行しており、今後、多くの場面で危機的な状況が現出する可能性があるという状況なのです。
こうした状況にあって、われわれITコーディネータの果たすべき役割は決して少なくはありません。
いまだ、DX化はもとより、デジタイゼーションやデジタライゼーションにすら至っていない中小・中堅企業は数多く、そうした企業に限って、現状への危機感が経営者や社内で共有されていないまま、いわゆる「ゆでガエル」状態に陥っている状況です。
われわれITコーディネータこそが、そうした企業、その経営者に寄り添いつつも、時に厳しい言葉で状況を説明し、危機感を共有できるようにすすめていかなくてはならないと思います。
ITC近畿会は、80名の仲間とともに、この1年も様々な活動に取り組んできました。
昨年度からスタートしたセミナー活性化プロジェクトの取り組みでは、従来の会員向け支援活動であったセミナー事業を広く門戸を開放し、会員以外のITCや一般顧客にも参加いただける有償セミナーを9回開催し、約100名の参加を得ています。
恒例となりました「デジタル経営カンファレンス」も、このセミナー活性化で培った運営ノウハウを駆使して開催することができました。今年度も引き続き、さらにレベルアップした取り組みを進めようとしています。
過年度からの引き続きの活動として、I&Iファーム東京や横浜、愛媛などのITC団体と連携してのケース研修事業の推進、大阪信用金庫が開催した「だいしん課題解決型マッチングフェア」への出展、6年目となる尼崎商工会議所の製造業向けDX席ナー事業の受託や専門家派遣などを行ってまいりました。
各地で活動するITC団体やその他の団体との提携も増えています。
中小、およびベンチャーのITベンダーが多数参加するNPO法人JASIPAの関西支部と連携しいくつかの提携事業を行っています。首都圏の多摩地区で活動するITコーディネータ多摩協議会とも提携しました。
2025年度もこれまでの活動を引き継ぎながら、ご参加いただいているすべてのITコーディネータのみなさんの研鑽の支援を行うとともに、より多くのビジネスの機会の提供をめざしていきたいと考えています。
引き続きITC近畿会の活動にご参加いただきますようお願いをいたします。
2025年6月14日 2025年度通常総会にて
特定非営利活動法人ITC近畿会 理事長 垣見 多容